「相変わらずやる気がないみたいですね、らしいですけど」
「……それは褒めてるのか、それとも貶しているのか?」
「まさか、そんなことないですよ。だってやる気満々の克彦先輩なんて、想像するだけで怖いじゃないですか」
にっこりと、無邪気な笑顔を浮かべる珠洲と、その周りで
「ばっ、おまっ!なんて命知らずな…!」と顔を真っ青にしてハラハラしている幼馴染やら過保護な弟やらを克彦は静かな目で一瞥してから。
「…いい度胸だ、覚悟は出来ているんだろうな」
唸る様に呟きながら、どこから出したのか、手には見慣れすぎた弓を携え、慣れた動作で矢を番えた。
ゆらりと揺れる銀色の髪から覗いた薄蒼の瞳は、決して敵との戦いの最中でさえ見たことのないほどに輝いていた。いや、ぎらりと鈍い光を宿している。例えるなら獲物を前にした狩人だ。この場合本気で洒落にならないが。
あわあわ、と慌てふためく守護者一同と、この状況下になってもまだきょとんとした表情で何にもわかっていそうにない珠洲に向けて。
「喜べ、お望みどおり…殺る気満々の俺を見せてやるよ」
「じ、字っ!字が違うって兄貴…っ!」
普段は冷静沈着という言葉がこれでもかというほどぴったりと当てはまる彼だけれど、このときばかりは血の繋がった弟の言葉すら、その時の壬生克彦の耳には一切届く事はなかった。
お題は「確かに恋だった」様よりお借りしました。
彼女の長いセリフ5題より、
「4.相変わらずやる気がないみたいですね、らしいですけど」
これはマンガ向きのネタだったかな。
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